<6>新型コロナウイルス(COVID-19)の種類
この記事は以前にLINEのタイムラインに載せた内容の備忘録です。
最新の内容ではなく、私見も含まれるのでその点をご了解下さい。
常に最新の情報を入手するように心掛けて下さい。
[令和2年4月30日 LINEタイムライン掲載]
コロナウイルスの種類について書きます。
既に分かっていること、分かっていないことをできるだけ明確に書きたいと思います。
ウイルス学的な内容なので詰まらない部分が多いと思いますが、良ければお付き合いください。
新型コロナウイルス(COVID-19)という表現を使うので、「旧型」コロナウイルスがいることは想像できると思います。
「旧型」というのは意味合いにいささか疑問がありますので、「従来型」コロナウイルスと呼ぶことにします。
人間に感染するヒトコロナウイルスは今回のCOVID-19を含めて7種類が知られています。
従来型には6種類が知られ、風邪症候群ウイルスとして知られる4種類と過去に致死的肺炎でアウトブレイクした2種類です。
◇感冒などを引き起こす4種類
・HCoV-HKU1
・HCoV-NL63
・HCoV-229E
・HCoV-OC43
◇致死的肺炎のアウトブレイクを起こした2種類
・SARS-hCoV(SARSウイルス)
・MERS-hCoV(MERSウイルス)
新型コロナウイルスは「COVID-19」と命名されましたが、ウイルスの遺伝子解析や派生系統樹の評価からSARSウイルスの近縁と考えられています。
ウイルス学的には「SARS-hCoV-2」と呼ばれています。
「SARS-hCoV-2」と「SARS-hCoV」はかなり性質が似ていると言われていますが、T細胞への侵入と増殖ごCOVID-19には見られるがSARSウイルスには見られないなどの差も報告されています。
【資料1】は各種コロナウイルスの抗体を解析したものです。
赤枠で囲った部分を見ていただきますと、COVID-19(SARS-hCoV-2)とSARSウイルス(SARS-hCoV)がとても似ていることが分かると思います。
人工か自然発生かの議論はありますが、武漢肺炎ウイルスとSARSウイルスはかかなり似た抗原性と考えられます。
ちなみに、この【図1】は新型コロナウイルスだけを検出できる抗原検査キットが開発できるかもしれない、という記事から取りました(※1)
簡易抗原検出キットの臨床応用により、全国の病院や診療所で迅速かつ簡便に新型コロナウイルスの感染の有無を評価できるようになると思われます。
ここにきて、SARS-hCoV-2にもわずかながら種類が在ることが分かってきています。
中国・武漢で発生して爆発的に流行した「L亜型」と日本や欧州などその他の地域で流行している「S亜型」です(※2)(※3)。
この説が正しいのか否かはまだ分かっていません。
「S亜型」についても、東アジアのタイプと欧州のそれで違いがある可能性が示唆されています。
亜型の区別はRNA塩基配列の差によるものであり、それぞれの毒性や感染性についてまだ結論はありません。
COVID-19に感染して症状が治った人が別の亜型に感染した事例が分かっていて、新聞などでときどき話題になる「再感染」の理由になるかもしれません。
いずれにせよ、このSARS-hCoV-2は一筋縄ではいかないウイルスだということがわかります。
【資料2】は現在の感染者数を表したものです。
欧米での流行がとどまることをしません。
先ほどの「亜型」についても触れることになりますが、先頃気になるニュースが飛び込んできました。
今後の日本国内での感染に危惧される内容でしたので、次の次<8>に書きたいと思います。
ワクチンや治療薬の開発および臨床応用にあたっては、亜型の特性に影響されないものが望まれます。
※1) 新型コロナウイルス抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の作製に成功 〜国産初の抗原簡易検査キット開発を目指す~ https://www.agara.co.jp/article/57747
※2) On the origin and continuing evolution of SARS-CoV-2 https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwaa036/5775463
※3) Response to“On the origin and continuing evolution of SARS-CoV-2” http://virological.org/t/response-to-on-the-origin-and-continuing-evolution-of-sars-cov-2/418