■映画《ジョジョ・ラビット》
映画の話題で、例によって例の如くネタバレ内容です(注意)。
ネタバレが絶対に嫌、という方は見ないで下さい
今回はナチスドイツをテーマにした映画で、実際のところ、賛否が大きく分かれている映画でもあります。
ナチスの凄惨な歴史的事実を茶化しているという批判から、戦時の少年の心の葛藤からナチス下の市民がどう考えていたのかを類推できる名作とも言われています。
どちらにしろ、このテーマはどう表現するかがとても難しく、タイカ・ワイティティ監督は“現代に受け入れられる”タッチで戦争がもたらす歪んだ心の動きを「少年」を用いることでより深く表現したのだと思います。
【ネタバレ】(映画.comから)
第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョは、空想上の友だちであるアドルフの助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった・・・・・。
監督のタイカ・ワイティティが演じる空想上の友だち「アドルフ・ヒットラー」と主人公のジョジョ少年のコメディータッチなやり取りが見物です。
同じヒトラーユーゲントの友だちヨーキーとのやり取りも面白いです。
と言いますか、このヨーキーとの会話や心の変化は、ヒトラーとジョジョの関係にも大きく関係しています。
母親のロージーを象徴するものが『靴』です。
もう少し言うなら、『靴』と『靴紐』ですね。
母親がジョジョと結ぼうとする絆が『靴紐』に象徴されていて、ジョジョはそれが結べません。
最後まで結べなかったときのジョジョの大泣きには、見ている自分も涙が出てきてしまいます。
赤い『靴』は、この映画の終わりまで象徴的な意味合いを持ちます。
父親はすでに反政府活動家として異国パリで処刑されており、母親のロージーにもゲシュタポの捜査が及びます。
家宅捜索があったということは既に母親は危機的な状況にあり、「偶然通りかかった」クレンツェンドルフ大尉がジョジョとユダヤ人少女エルサの危機を救ってくれます。
ゲシュタポのディエルツ大尉はクレンツェンドルフ大尉が怪しいことも気付いている様子。
敗戦時にゲシュタポ・ディエルツ大尉らが連行されるシーンがありますが、処刑された者、生き残った者の理不尽さを感じる場面でした。
クレンツェンドルフ大尉と部下のフィンケルはGayの恋仲🧡
当時のドイツでは同性愛は犯罪であり処刑の対象だったので、それをひた隠しに生きていたわけですが、そういった事情もありクレンツェンドルフ大尉は実は反政府側の人間であったわけです。
クレンツェンドルフ大尉=キャプテンKは、“最期”の場面までジョジョを助けてくれました。
そのとき既に恋仲のフィンケルは死に、キャプテンKが守れる唯一の存在だったのだと思います。
ジョジョとユダヤ人エルサの最後のやり取りには含みがあり、さまざまに解釈できそうです。
母親の無念を晴らすことができたわけでありませんが、すべてを失わなかったことも若干の救いだったと思います。
しかし歴史的に見れば、そのときまで数百万のユダヤ人、ロマ人、同性愛者、共産主義者などなどが処刑されていたわけで、気軽にHappy ENDとは言いがたいのも事実です。
歴史的事実と創作の狹間でいろいろな思いが出てくるのも、名画の理由だと思います。
少年とナチスドイツを扱った映画で最後の最後まで重たいまま進み、えも言われぬ終わり方をする「名作」がありますが、こちらは気が向いたら紹介したいと思います。